仮想通貨の申告で破産しないための仮想通貨・確定申告ガイド

2018年3月は、税務当局による仮想通貨の税務上の取り扱い決定後、初めての確定申告シーズンとなる。

仮想通貨の税務 その理解と対策の必要性

仮想通貨の取り引きを行うためには、税務についての正しい理解と知識が必要です。税務について正しく理解することは、ディフェンス(資産を守る)のみならず、正しいオフェンス(資産を形成する)でもあるのです。

■仮想通貨にはなぜ税務対策が必要なのか

2018年は、はからずも「億(おく)り人」[*1]になってしまった人たちの確定申告元年なのですが、「税務の知識がなかったために正しい納税を行わず、破産に至った」などということも生じかねない年でもあります。まさに、「death and taxes」は誰にでも確実に訪れるものなのです。

後述しますが、課税所得金額4,000万円超の区分が設けられて以降、個人所得税の最高税率は45.945%(所得税45%および復興特別所得税0.945%)にものぼります。更に10%が住民税としてこれに加算されます。

納税のための金額を確保していない場合は、そのために仮想通貨を売却することが必要になります。前年度に比べて価格が上がっている場合には、売却して納税額を確保することも可能ですが、価格が下がっている場合には必要な額が確保できないおそれもあります。さらに、1月1日以後に納税額の確保のために仮想通貨を売却し、その結果として利益が生じた場合はさらにその額に基づく納税を翌年に行うことが必要になります。

仮想通貨取り引きを行うために、税務についての正しい理解と知識が必要です。税務について正しく理解することは、ディフェンス(資産を守る)のみならず、正しいオフェンス(資産を形成する)でもあるのです。

【億り人(おくりびと)】ビットコインを始めとする仮想通貨の急騰で、1億円単位の資産を手にした投資家を指す造語。1億円以上を稼ぎ出した投資家のことを「億り人」、10億円以上稼ぎ出した投資家を「自由億」と呼びます。

■国税庁の仮想通貨に関する見解

仮想通貨に対する立法的な手当てがなされていない現在、“8月タックスアンサー”と“情報4号”が仮想通貨に関する税務の拠り所となります。平成30年度税制改正の大綱(平成29年12月22日閣議決定)にも仮想通貨の税制に関する記述はないため、2018年についても現在のままの取り扱いになる可能性が高いと言えるでしょう。

2017年8月28日、国税庁は、タックスアンサー(以降、“8月タックスアンサー”とします)の中で、ビットコインを使用することにより利益が生じた場合、現行税制に従い課税されることを次の内容で明確に示しました。

ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係

ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。(所得税法36条)
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。(所得税法35条)

更に2017年12月には、「平成29年12月1日個人課税課情報第4号」(以降、“情報4号”とします)の中で、ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却、または使用することにより生じる仮想通貨損益やその具体的な計算方法等について、以下の9項目を中心に取りまとめたものを例示しています。

1. 仮想通貨の売却
2. 仮想通貨での商品の購入
3. 仮想通貨と仮想通貨の交換
4. 仮想通貨の取得価額
5. 仮想通貨の分裂(分岐)
6. 仮想通貨に関する所得の所得区分
7. 損失の取扱い
8. 仮想通貨の証拠金取引
9. 仮想通貨のマイニング等

仮想通貨に対する立法的な手当てがなされていない現在、“8月タックスアンサー”と“情報4号”が仮想通貨に関する税務の拠り所となります。平成30年度税制改正の大綱[*4](平成29年12月22日閣議決定)にも仮想通貨の税制に関する記述はないため、2018年についても現在のままの取り扱いになる可能性が高いと言えるでしょう。

8月タックスアンサーにより、ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却し、または使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要となることが明確になりました。

“8月タックスアンサー”ではビットコインのみをとりあげ、ビットコインを使用することにより生じる損益は原則として雑所得に区分されるとしていました。その後の“情報第4号”では仮想通貨5一般を対象として、仮想通貨損益やその具体的な計算方法等が示されました。では、仮想通貨とは何なのでしょうか?

仮想通貨は、日本以外の多くの国と地域では暗号通貨(Cryptocurrency)と呼ばれています。ビットコインも、1998年にサイファーパンクのメーリングリストで、ウエイ・ダイ(Wei Dai)が説明した暗号通貨(Cryptocurrency)のコンセプトを実現したものです。

このコンセプトは、「中央権力によらない通貨の発行・取り引きに暗号学を使った新しい形態・方法を使おう」と提案したものでした。

日本では、当時世界最大のビットコイン取引所であったマウントゴックスの破産騒動の際、「仮想通貨」という名称で報道がなされたため、この名称が一般的になりました。そして、2016年に資金決済法の改正が行われ、この改正資金決済法2条5項に「仮想通貨」という用語が法令上の用語としても定義されるに至りました。

2015年6月に米国ニューヨーク州で成立した仮想通貨法では、「仮想通貨とは、換金できる媒体として利用される、またはデジタル的に保存された価値の形式で利用される、あらゆるデジタル情報(unit)を意味する」と規定しています。

「広義の仮想通貨」には、電子マネー、ゲーム用途で用いられるポイントやゲーム内の通貨、お店が顧客に提供するポイントやそのプログラム、アマゾンの電子メールを利用したギフトカードなども含まれてしまうように見えます。

それゆえ、同法では、最初に包括的な定義を設けていますが、例外的にこれらのものは含まないとしています。

日本では、2016年に資金決済法の改正が行われ、6月3日に公布されています。公布の日より1年以内に施行されることになっており、2017年4月から施行されました。

この改正資金決済法第2条第5項に仮想通貨の定義があり、次の要件をすべて満たすものが仮想通貨とされています。

仮想通貨の定義

①物品の購入や借り受け、サービスの提供を受ける場合に、その代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入および売却を行うことができる財産的価値であること
②電子的方法に記録された財産的価値で、電子情報処理組織を用いて移転できること
③日本国または外国の法定通貨や通貨建資産に該当しないこと

□仮想通貨による所得について

8月タックスアンサーにより、ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却し、または使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要となることが明確になりました。

個人所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の期間内の収入・支出、医療費や寄付、扶養家族状況などから所得を計算した申告書を税務署へ提出し、納付すべき所得税額を確定し、翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に納税すべき額を報告・納付することです。

所得税の確定申告をすると、住民税の確定申告もしたことになります(なお、サラリーマンなどの給与所得者については、給与所得および退職所得以外の所得が20万円以下であれば、所得税の確定申告をしなくても問題ありません。厳密には、所得が生じていれば住民税の確定申告は必要なのですが、住民税だけを申告されている人は、ごくわずかであると思います)。

■所得の区分と課税

仮想通貨による利益は雑所得として扱われます。雑所得内で利益と損失が生じている場合は相殺することができます。

□所得区分

所得については、給与所得や事業所得、譲渡所得、雑所得など、その収入の種類と性格により10種類に区分されています。

納税額は所得の区分ごとに計算方法が異なるので、譲渡所得に該当するか、雑所得に該当するかにより大きく異なっているため、仮想通貨による所得がどちらに該当するか注目されていました。

8月タックスアンサーにより、先ずは、ビットコインに関して生じた利益は、原則として、「雑所得」に区分されることが明確にされました。

□課税

雑所得は、他の所得(給与所得など)などと合算して所得税を計算する総合課税制度(累進課税5%から45%、復興特別所得税=所得税の額の2.1%相当額、住民税10%)が適用されます。

譲渡所得のうち、申告分離課税制度が適用される株式(税率一律20.315%)などと比べ、税額負担が著しく大きなものとなっています。

また、雑所得に関しては損益通算制度が適用されません。従って、

1. 雑所得の計算により損失が生じた場合も、他の所得(給与所得など)から控除(利益と損失の相殺)をすることはできない、
2. 損失を翌年以後に繰り越すこともできない

ということになります。

なお、雑所得内で利益と損失が生じている場合は相殺することができます(但し、申告分離課税の雑所得とは相殺できません)。

■今年確定申告することが重要

情報不足により確定申告を怠り、無申告や過少申告が税務調査で判明した場合には、懲罰的な加算税および延滞税が課されます。

これまで述べてきたように、今回の確定申告は国税庁から示された方法により行われるはじめての納税です。その際、損益を確定するために後述する「移動平均法」、「総平均法」という方法を採用し、仮想通貨の「取得原価」を算出します。

今回の確定申告を適正に行わなかった場合、来年以降の申告の際に取得価格の適切な算出ができなくなるおそれがあります。すなわち、取得単価の計算上のつじつまが合わず、永久にごまかすようなことを行わざるを得ないような事態に陥ってしまいます。

仮想通貨は、インターネット上のP2Pデジタル通貨という性質上、金融機関における記帳と異なり、取り引きの流れを把握することには一定の困難を伴います。しかし、ブロックチェーンを使用しているため、その履歴が消失したり、改変されたりすることもありません。

また、国税当局は税逃れ対策に動き出しているとの報道もあります。

国税当局は多額の売却益を得た投資家らの調査を始めた。数千万~数億円の利益を得た投資家らをリストアップ。2018年の確定申告に向け、取り引き記録や資産状況をデータベースにまとめ、税逃れを防ぐ考えだ。

朝日新聞2018年1月1日付「ビットコイン長者、国税がリストアップ着手 税逃れ対策」より

仮想通貨の取引所も、既に要請のあったデータの提供は完了している模様です。このような状況の下、無申告や過少申告が税務調査で判明した場合には、次のような加算税および延滞税が課されます。

□加算税

過少申告加算税、無申告加算税、重加算税などが課されます。(加算税の概要を参照)

□延滞税

納付期限の翌日から2月を経過する日までは、原則として年「7.3%」。納付期限の翌日から2月を経過した日以後、原則として年「14.6%」 にて延滞税が課されます。但し、平成26年1月1日以後の期間は、納付期限の翌日から2月を経過する日までは「年7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合を、納付期限の翌日から2月を経過した日以後は「年14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合が適用されることとなっています。また平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間の延滞税については、それぞれ「年2.6%」、「年8.9%」の利率となっています。

 このような高額かつ懲罰的な税金を追加で払う場合、おそらく仮想通貨で構築された資産をすべて売却しなければ納税が完了しないような事態になってしまいます。また、当該売却自体が利益確定となる場合には、翌年に当該売却行為で生じた利益にも課税がなされ、支払うべき現金や資産が存在しない場合には、破産ということも起こります。

 このようなことを防ぐためにも、自主的に正しい確定申告を行い、納税を行う必要があります。

タイトルとURLをコピーしました